膝関節は体の中で一番大きな関節
膝関節は、太ももの骨である大腿骨(だいたいこつ)とすねの骨である脛骨(けいこつ)が接合する関節です。それを支えている大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と膝蓋腱(しつがいけん)に、お皿の部分である膝蓋骨(しつがいこつ)が組み合わさった関節のことを言います。
膝関節を構成する大腿骨と脛骨、膝蓋骨の3つの骨は、やわらかい関節軟骨で覆われており、クッションのような働きをして衝撃を吸収するようになっています。
大腿骨と脛骨の間には半月板というアルファベットのCの形をした軟骨の板があり、これも他の軟骨と同様に、膝関節にかかる衝撃を吸収する働きをしています。
さらに、膝関節は関節包という袋に包まれ、この内側にある滑膜(かつまく)というところから関節液を分泌しています。軟骨と関節液により、関節はスムーズに動くことができます。
しかし、加齢や過度な負荷などによって、軟骨の損傷や靭帯の断裂などが起こり、膝関節の機能が低下することがあります。
膝関節の痛みの原因
年齢を重ねてくると、激しいスポーツをしていなくても、日常生活の歩行や、階段の上り下りで膝関節が痛むことがあります。
これは「変形性膝関節症」によるものが多く、加齢や肥満により膝関節にある軟骨がすり減り、炎症を起こした状態になって痛みが出るものです。
変形性膝関節症が進行すると軟骨がすり減って膝関節の変形が進み、X脚、O脚が高度となり、ひどくなると日常生活にも支障が出るようになってしまう場合もあります。
膝関節に現れる症状
膝関節の痛みは、膝関節を曲げ伸ばしすることで起こるものが多いといいますが、他にも下記のような症状に悩まされる人が多いです。
- 膝の裏が痛む
- 膝の外側が痛む
- 正座することができない
- 膝の内側が痛い
- 膝の内側を押すと痛む
- 膝に水がたまる
- 膝がポキポキ鳴る
- 膝がギシギシする
- 膝がカクンとなる
このような症状が現れたら、何らかの疾患を抱えている場合が多いといえます。
しばらくしても症状が改善しない場合は、整形外科を受診しましょう。
膝関節の病気(病名)
膝関節の病気でまず疑われるのは「変形性膝関節症」です。外傷やけがなどをしているわけではないのに、膝がこわばりや痛みが続くなどの症状がでます。変形性膝関節症は、女性全体の70%が発症する関節疾患で(*2)、加齢とともに出てくる病気のひとつでもあります。
また、半月板もスポーツをする人だけでなく、加齢とともにすり減るため、膝を曲げ伸ばしするときに引っかかる感じがする場合は「半月板損傷」を疑います。摩耗がひどい場合には、膝を一定以上の角度に曲げられない状態になる場合もあります。
治療をしなくても痛みが治まることがありますが、放置すると変形性膝関節症になりやすくなってしまうため、症状が続く場合は整形外科を受診すると良いでしょう。
*2 整形外科と災害外科「変形性膝関節症の疫学―患者数推定と患者調査結果の検討―」
膝関節の疾患には下記のようなものがあります。
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- O脚(内反膝)
- X脚(外反膝)
- 膝靱帯損傷
- 膝離脱性骨軟骨炎
- 膝蓋骨脱臼
- 腓骨神経麻痺
- 膝関節捻挫
- オスグッド病
- スポーツによる膝の慢性障害
膝関節の治療方法
膝関節の治療方法ですが、変形性膝関節症などの病気は、症状の進行状況の検査や、日常生活への影響度を加味しながら患者様と治療方法を決定します。
保存的療法
手術以外の方法で、膝関節の痛みなどの症状が悪化しないように改善していく治療法のことを言います。
代表的な保存的療法は下記のようなものが挙げられます。
- 運動療法……ストレッチや筋力トレーニングなど
- 薬物療法……痛み止めの内服薬や湿布薬を用いるもの
- 注射療法……ヒアルロン酸や神経ブロックなどの注射を用いるもの
手術的療法
変形性膝関節症など、進行が進んでおり、日常生活に支障が出ている場合にとられる方法です。
代表的なものには下記のようなものがあります。
- 人工膝関節置換術
- 骨切り術
- 関節鏡視下手術
再生医療
自らが本来持つ成長因子を利用した療法で、患者さん自らの血液から痛んだ組織を再生する成分を専用の医療機器を使用して抽出し、患部に注射して痛みの低減や組織の修復を助ける治療法です。
代表的なものには下記のようなものがあります。
- PRP療法
- APS療法
再生医療による膝関節の治療は、現段階では保険適用外であるため高額になりますが、膝を切開することがないため、入院が必要ないこともメリットの一つです。
膝関節の手術方法(術式)の種類
膝関節の手術にはさまざまな術式があります。変形性膝関節症ひとつとっても、症状の進行具合でとられる術式は変わってきます。
代表的なものには下記のようなものがあります。
関節鏡手術
膝の変形があまり進行していない、初期の変形性膝関節症に用いられる術式です。
骨切り術
膝関節が変形したために膝の中央に荷重がかからなくなった状態を、自分の骨を切ることで少し角度を変え、軟骨があまりすり減っていない側に、荷重がかかるように調整する手術です。膝下の内側を8センチほど切開し、脛骨を斜めに切り、膝関節の変形の状態に合わせて角度を付けて膝の中央に荷重がかかるようにしたら、人工骨を挟んで金属のプレートで固定します。患者さん自身の膝関節を温存できるため、正座することができたり、スポーツができるようになった方も多くいる手術法です。その一方で、骨が癒合するまでに時間がかかるためその間は痛みが続いたり、機能回復に長期間のリハビリが必要になります。
人工膝関節置換術
人工膝関節置換術は、膝の変形が進んだ方に用いられる術式です。変形した膝関節の面を取り除き、人工関節に置き換えます。痛みの原因になる部位は金属などで覆われてしまうため、術後痛みがなくなるのが特徴です。早ければ術後当日からリハビリを開始し、入院期間は医療機関にも寄りますが早ければ2週間程度で、日常生活を送れるようになるまで回復したら退院となります。
人工関節置換術には全置換術と単顆置換術(片側置換術)の2種類があり、全体が痛んでいる場合は全置換術、内側や外側など、片側だけが痛んでいる場合は単顆置換術を行います。
人工関節置換術は術後の違和感が少なく、人工関節置換術を行ってもある程度スポーツを楽しめるようになる方も多いです。
膝関節手術の術後の経過
膝関節の手術が終わったら、翌日からリハビリが始まります。
術式にもよりますが、人工股関節置換術の場合は、膝を曲げ伸ばしする訓練から、平行棒を使っての歩行訓練などを行います。徐々に歩行距離を伸ばして日常生活を送れるようになるまで回復したら退院です。医療機関にもよりますが早ければ2週間ほどで退院できるでしょう。
術後に多少痛みがあっても早めにリハビリを開始し、筋肉を強化させたり、関節の動きを良くすることで早期に日常生活に復帰することが可能です。
退院後は定期的に外来で検診を受け、人工関節手術を行った場合は関節の部品に問題がないか、また関節にゆるみが生じていないかを確認します。たとえ痛みがなくても、定期的に病院で検査を受けましょう。
膝関節を傷めないためには
膝が痛くなると動くのが億劫になってしまう方が多いかもしれませんが、安静にしすぎるのは逆効果です。痛みが出ない程度にストレッチなどを行って、膝の周りの筋肉が落ちないようにしたり、血行を促進することで痛みを緩和することができます。また、膝に負担がかからないように、体重をコントロールするのも大切です。適度に動き、体重を気にかけることで、膝への負担は軽くなり、いつまでも自分の脚で歩ける身体を保つことができます。
膝関節の痛みでお悩みなら、信頼のおける専門医へ
ちょっとした膝の違和感や、ふとした時に出る膝の痛みは、ついつい放置してしまいがちです。しかし、それらは変形性膝関節症といった膝関節疾患からくるものかもしれません。
もしかして、と思ったら、専門医への受診をおすすめします。 整形外科はその医師によって専門分野が違い、膝を専門で診察する医師もいるのです。 幅広い治療方法の提案も専門医なら可能です。
専門医を受診することは、自分が抱えている痛みや違和感などの、悩みの解決につながります。